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コンコン!
ルディは力を込めて扉をノックした。
「誰じゃ?新聞なら間に合っとるぞ!」
(え…し…新聞…??)
それが何のことだかわからず、頭をひねりながらルディがドアの前に立っていると、中から長い白髪の老人が顔をのぞかせた。
「なんじゃ、子供か。
ハロウィンでもお菓子はやらんぞ。」
(は、はろうぃんって、なに?!)
次々と繰り出される知らない言葉に、ルディは戸惑い焦るばかりだった。
「……なんじゃ…リアクションの悪い子供じゃの。つまらん……」
「り…りあくしょん…??」
(りあくしょん…って、何??
ロディックさんは一体何の話をしてるんだろう…??
……はっ!もしかしたら、魔術師の専門用語…?)
冷や汗をたらしながら考えこんでいるルディを見て、ロディックはいいかげんからかうのをやめた。
(駄目じゃ…この子は面白くなさすぎる…わしのハイセンスなギャグがまるで通じておらん!)
「……して、子供よ。
このロディックに何用じゃ?」
「ぼ、僕、立派な魔術師になりたいんです!
どうか僕に魔術を教えて下さい!」
「なんじゃ、そんなことか。
で、月謝はいくらくれるんじゃ?」
「げ、げ、月謝がいるんですか!」
「当たり前じゃ。
わしのこの高等魔術がただで教われるわけがないじゃろう!」
確かにこの老人の言う通りだ……
ルディは、大人の世界の厳しさに打ちひしがれた。
しかし、ロディックに断られてしまっては、他に頼る手立てはない。
ルディは、懸命に食い下がった。
「ぼ、僕の家はとても貧乏で……4畳半の1DKに家族3人で暮らしてるんです。
風呂なしでトイレも共同です。
だ、だから…とても月謝は払えません…でも、その分、僕、一生懸命働きますから……
どうか、どうかお願いです!」
「う~ん、しかし、おまえのような子供がいてもなぁ……」
「僕、なんでもしますから!!」
「なんでもとじゃと…?
では、住み込みで弟子入り出来るか?
修行はものすご~く辛いぞ。
……それでも良いのか?」
「はいっ!
ぼ、僕、頑張ります!」
ルディはまた3時間かけて家に戻り、両親に山奥留学の話をした。
当然、両親は猛反対したが、ルディの決心は固く、3日後にはとうとう両親も根負けした。
「ありがとう、父さん、母さん!
本当にありがとう!」
ルディは何枚かの着替と身のまわりのものだけを袋に詰め、再びロディックの住む小屋を目指した。
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