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  彼女がよく写真を撮っているのはクラスの誰もが知っている。スマートフォンのカメラ機能ではなく、淡いピンクの手のひらに収まりそうなサイズの、おもちゃみたいな可愛らしいカメラ――トイカメラという種類らしい――を常に持ち歩いているようだ。  彼女の友達たちがスマートフォンで撮影する、大きくてきれいな夕日、可愛らしいキャラクターのアクセサリー、後で専用のアプリを使って編集するであろう自身の姿、等には興味がないらしい。ほとんど店が閉まっていてシャッター通りと化している商店街、ビルとビルの隙間狭い路地を歩いている野良猫、公園に子供があまり近寄らないせいか改修されることなくペンキが剥げて赤茶色の錆が見えている遊具、といった、あまり画面映えしなさそうな物を被写体に選び撮影しているのを何度もクラスメイトが目撃している。実は霊感があって、心霊写真を撮っているなんて噂まで出回っている。  写真を撮るのが好きなのは知っていたけど、コンテストに出すほどに熱心だとは知らなかった。自分にはコンテストに出せるほどに長けたなにかの才能も、努力もしたことがなかったために、少し彼女が羨ましい。 「どう?」彼女が尋ねる。 「ごめん」  僕なんかよりモデルに相応しい人物はいる。もし僕をモデルに選んだせいで、コンテストで落選をし、彼女の努力を無駄にするのは嫌だ。それ以上に、落選した責任を追求され、彼女のグループから目の敵にされてクラスに居づらくなってしまうのはもっと嫌だ。 「……そっか、残念」  軽い口調で言い、また彼女は自分の友達の輪へと戻っていった。  もう少し説得されるのを想定し、断る言い訳を考えていた僕は拍子抜けしてしまった。他にも頼める人間はいる。特別に僕じゃなければいけない理由もないのだろう。  残念。
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