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 梅雨のじめじめした日曜日の昼間も男は街中を小山が揺るぎ出たように歩いていた。  三つ巴模様の入った浴衣を纏い、便々たる布袋腹を突き出し、宛ら巡業の気晴らしにぶらぶら出歩く力士のような風情もあるが、その実、妻を憎々しく思いながら少しでもやせようとしているのである。  この男、小微助と言って、その名の通り短小なものを股間に付けていた。  その為にいつも嘆いていて妻に馬鹿にされるのもその為だった。  彼は肥満体にありがちな大変な汗かきだから横町を抜けた時には蒸し暑い陽気も手伝って汗をだらだら掻いていた。  郊外に出て小道を歩いていると、林近くで八つ手が目に留まり、珍しく八つに裂けている葉を発見した小微助は、これは縁起がいいと思った、その直後、俄かにどんより曇って来たので上空を見上げた。
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