2015年 〔春の陣/如月鍋〕

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16次元:にんにくの丸揚げ  S県H市は、俺が永住を目論んでいた地方都市である。だが、俺の永住計画はガラクタ同然にぶち壊された。俺自身の優柔不断と、馬鹿な奴らの妨害工作(嫌がらせ)が重なり、計画は頓挫、粉々に砕け散ったのだった。  崩壊後、俺は計画を「永住」から「脱出」に切り替えた。こんな連中とは、とてもつき合い切れない…と、判断したからだ。精神の歪んだ連中と関わっていると、こちらの感覚まで狂ってしまう。  歪んだ連中を正してやろうなどとは、考えぬことだ。少なくとも、俺は考えないようにしている。精神の歪みは並大抵のことでは直らないからである。そのようなことに手間と時間を費やすならば、それとは別の、有益(有望)な分野に投資をした方が良い。  この際に云っておこう。無神経な人間とは、文字通り「神経」がない。神経のない奴らは、他人の心を土足で踏み躙っても平気である。踏み躙ったという意識すら持たない。持たぬ輩にまともに接しても、ダメージが増えるだけである。  無神経には無神経で対抗して構わない。何度か試せば「バリアの張り方」を会得できる筈である。しかし、バリアにも限界がある。アホ面が威張り散らしているような組織や団体には、見込みがないし、将来性もない。一刻も早く脱けて、別の道を探すべきだろう。  10年か11年前の話だが、H市の商店街に店を構える居酒屋さんに行ったことがある。この界隈に詳しい方に案内してもらったのだ。気楽な感じの素敵な店であった。壁面に酒肴の名称が記された短冊がずらりと並んでいた。眺めているだけでも楽しい。その中に「ばくだん」という不思議な品名を発見した。  俺は驚きと同時に興味を覚えた。マスターに訊ねてみると「ばくだん」とは「にんにくの丸揚げ」のことであった。好奇心に任せて、注文してみたら、これが旨い。塩で食べても、味噌で食べても旨い。  命名の由来は、不覚にも忘れてしまったが、以後、にんにくの丸揚げは、俺の好物に加わった。手元の『おつまみ横丁』にも、丸揚げの作り方が紹介されているが、俺がやると「本物の爆弾」に成りかねないので、手を出さないようにしている。〔2月1日〕 ♞にんにくはそのまま食べるより、加熱した方が旨味も風味も増す。体調不振の際は、素揚げを中華スープに浮かべて食べよう。俺のにんにく好きは、多分、祖父譲りである。〔2018年12月8日〕
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