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第3章 般若亜美
亜美は、普段は見ないテレビの画面を見つめながら、少し苛立ちを覚えた。
「・・・・・・・・?」と亜美の後ろにいる黒い影が心配そうな雰囲気を出しながら、何か言葉を発した。
「そうね・・・。堅く約束をしておけば良かったかもね。でも、ここにいる時に彼女の姿を見ている人はいないから。大丈夫よ。今夜、最初に出会った場所にいって、あの周りの記憶だけは消しておきましょう」と亜美が立ち上がりながらいった。
「亜美様。私の体の方もそろそろ、契約期間が満了ですが?」とたすけがいった。
「そっちは契約満了かも知れないけど、そもそも、彼のソウルイーターが行方不明だからね・・・」と亜美は腕を組みながらいった。
「例の・・・、悪霊退治という話しは、本当なのでしょうか・・・?」とたすけが心配そうな顔で聞いてきた。
「それは、本当かもしれない。封印していたヴィラッドがあの場所から消えたからね・・・。?!そういえば、昨日電話があった、この前取材に来たっていう記者。あの人に彼女の姿、見られているわ!ヤバいなぁ・・・。このテレビを見ていなきゃいいのに・・・」と亜美は両方の手の人差し指で自分のこめかみを抑えながらいった。
亜美は、取材に訪れた青年の姿を思い出して、彼がどんな行動を起こすのか想像してみた。
「このニュースって、午後からよね・・・。彼女を返したのが昨日だから、昨日のうちに彼に知られた?という事はあるかしら・・・」と呟くと、たすけが、「何のお話ですか?」と聞いてきた。
「みちこさんが借りていた体。あのテレビに映っている女子高生がそうでしょう。あの姿をテレビに映されているけど、この前の記者があの女子高生を見たら、不思議がってすぐにでも来るわ。それを考えたら、今日の午前中に掛かって来た電話の内容。もう一度取材をしたいというのは、このニュースの事を知っていただったのかしら・・・?」といった。
「はぁ・・・。それは、あり得ない。とは言い切れませんね。彼、勘が鋭いようでしたから。もしかしたら、すでにこちらの事を調べているかも知れませんし・・・・」と、何か言いたげそうな言葉を、たすけは飲み込んだ。
「なに?何が言いたいの」と亜美がたすけに視線を向けながら聞いた。
「はぁ・・・。その・・・、みちこさんが、何か気になると言っていたので・・・」とたすけは、黒い影を見つめた。
「みちこさんが?」と亜美も、後ろに存在する黒い影を見つめた。
空に浮かぶ黒い影は二人の視線に応えるように、頷いている仕草を見せた。
亜美は空に浮かぶ黒い影に近寄って話しかけた。
「みちこさん。あの記者が気になるの?」と問うと、黒い影は頷いたようなしぐさを見せてから、「・・・・・・」と何か言葉を繋げた。
「えっ?懐かしい感じがした?」と亜美が言葉を代弁して口にした。
「懐かしい感じって・・・。それは肉体を持っていた頃の人間的な思い出?それとも、彼が何かしら関係しているとか?」とみちこに尋ねると、黒い影は困ったような仕草を見せた。
「そこはわからないようですね・・・」と、たすけが代わりに答えた。
「たすけさんは?どうなの?」と亜美が老紳士の方を向きながら尋ねた。
「私は・・・。そう聞かれますと返答に困りますが、みちこさんと同じく、何か気になる・・・、気にかかる青年である事は間違いありません」と頭を掻きながらいった。
「もしかしたら、二人の過去に関係しているとか?」と亜美が腕を組み直して、顔を横にそむけた。
「あの青年が、私たちの記憶の鍵になるということですか?」とたすけが聞いた。
「えぇ・・・。確信は無いけど・・・」と亜美がいうと、黒い影のみちこが昼間の外へ向かって体を浮かせていった。
「あっ!ダメ、みちこさん」と亜美が止めに入る。
「・・・・・・!」とみちこは言葉にならない何かを叫んだ。
「こんな明るい昼間は、チカラの消費が激しすぎる。そんなに気になるなら夜にでも彼の所へ行って、少し調べましょう」と亜美が提案すると、黒い影のみちこは、その体を静かに床の上に下ろした。
亜美はその姿を見て納得したと思い込んだのだ。
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