2017年 〔冬の陣/陽月鍋〕

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2017年 〔冬の陣/陽月鍋〕

501次元:加藤三成と三船左近  シャットダウン確認後、身支度と戸締りを済ませた。最後のカギをかけてから、自宅を離れた。歩数計の付属時計が「夜の7時」を示していた。  近所のスーパーに行き、食品を買おうとしたのだが、驚くべきことに食べたいものがひとつもなかった。篭を山に戻し、店を出た。信号を渡り、公園の方角へ歩いた。右手は小学校の運動場、左手は車道である。  あれはいつであったか、この道に「暴走おばさん」が現われて、界隈が騒然となったことがある。交通ルールを全否定したおばさんの運転に周囲は大迷惑を強いられていた。  その場にたまたま通りかかった俺は、状況が把握できず、最初は「映画の撮影でもやってるのかな…」などと考えていた。あまりにも非現実的な光景だったからである。サイレンを鳴らしたパトカーが駆けつけてきたので、これが「虚構」ではなく「本当」であると知ったのだった。  幸い、事故には至らなかったが、もし至っていたら、おばさんはどうしただろうか?依然、暴走を続けただろうか?想像を広げると怖くなる。彼女には彼女なりの事情や理由があるのだろうが、だからと云って「何をしてもいい」ということにはならない。  公園近傍の弁当屋に行き、幕の内弁当とおにぎり(鮭と昆布)を買った。自宅に戻り、シャワーを浴びた。居室に行き、弁当の惣菜を酒肴(さかな)代わりにして、焼酎の白湯割りを呑んだ。  晩酌後、洗面所に行き、歯を磨いた。磨いてから、水で薄めた嗽液で口中をすすいだ。居室に戻り、円盤(DVD)再生機の中に『関ヶ原』の1枚目を滑り込ませた。原作司馬遼太郎。1981年に放送されたもの。  岡田君主演の映画版が評判になっているが、テレビ版では加藤剛が敗戦将軍、石田三成に扮している。まさに適役…と絶賛したいところだが、加藤さんだと、恰幅が良過ぎると云うか、堂々とし過ぎていて、どうしても三成に見えない。実際の三成は、華奢な体格で、偉丈夫には程遠い人物だったらしいのだ。その意味では、ミスキャストかも知れない。  三成の腹心、島左近には、三船敏郎が扮している。黒澤映画以外の作品では、いささか精彩を欠く観がある三船さんだが、この役はいい。迫力満点、貫録充分。石田組の用心棒(?)として、睨みをきかせている。宿敵家康は、なんとモリシゲだ。参謀正信は三國連太郎。西も東も凄い顔触れである。〔10月1日〕
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