2017年 〔冬の陣/陽月鍋〕

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502次元:古書の処分  眼が覚めた。枕辺のアナログ時計が「朝の7時30分」を示していた。台所に行き、湯沸かし器にミネラル水を注いだ。沸き立ての湯で、即席珈琲を淹れた。窓越しの風景を眺めながら、熱いやつを飲んだ。  居室に行き、もうひとつの愛機、ニンテンドーDSを起動させた。今、同機には、中古屋で買った『ファミコンウォーズDS』が差し込まれている。任天堂印のバトル・シミュレーションだ。さすがによくできている。俺は治政ものは苦手だが、合戦ものは比較的得意である。  目下のところ、ショーグン(自分の分身)は、爆弾娘レイチェルを選ぶことが多い。魅力的なブレイク(特殊能力)を有しているからだ。  俺に戦才はない。序盤は、歩兵(コストが最も低い)軍団を派遣して、版図拡大に励み、中盤は、最強の陸上兵器グレートタンク(最も高い)を量産し、終盤は、G部隊で敵の本陣を包囲して、一気に潰す…わけだが、こんなものは「作戦」とは呼べない。戦勝評価も「A」が精々である。まあ、慌てる必要はない。プレイを重ねる内にだんだん巧くなるだろう。  電源を切り、洗濯の用意を始めた。1週間分の衣類を担いで、近所のコインランドリーへ向かった。店内はガラガラだった。マシンの扉を開け、中に衣類を放り込んだ。その上に粉末洗剤を撒き、扉を閉めた。閉めざまに「標準コース/お湯洗い」を選択した。指定の金額を投入し、始動ボタンを押した。所要時間は約30分。  帰宅後、物干し台に脱水衣類を吊るした。屋根裏部屋に行き、運搬準備を行った。読み終えた本と読む可能性が低い本を十冊を目安に紐で縛る。  塊りが三つできた。それらを袋に入れ、徒歩で10分ほどかかるショッピングセンターに運び、敷地内に設置されている「古紙回収ボックス」の中に収めた。収めると、本の重さに応じたポイントが与えられ、合計ポイントが「1000」に達すると、同センターで使える商品券がもらえる。  現在ポイントは「325」だから、ゴールはまだまだ遠い。でも、良いのだ。俺としては(古本を)引き取ってくれるだけでありがたいのだから。最大の掃除は「無くすこと」だと考えている。空間を占めている物体を消さぬ限り、真の整理はありえない。  その後、センターの近くにある食堂に行き、たぬき丼を食べた。壁際のテレビが、センセエ方が演じる不毛な争いを映し出していた。〔10月1日〕
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