2017年 〔冬の陣/師走鍋〕

1/15
前へ
/254ページ
次へ

2017年 〔冬の陣/師走鍋〕

540次元:高尾山〔一〕  JR高尾駅下車。改札を抜け、南口を出た。寒い。山はもっと寒いはずだ。歩数計の付属時計が「午前10時」を示していた。さて、どうするか。無論、腹ごしらえだ。空腹の状態では、合戦も登山もできぬ。  高尾駅から徒歩2分の位置にある『ヴィ・マエストロ』に入り、遅めの朝食(チーズトーストセット)をしたためた。夕方までは珈琲屋、夕方以降は葡萄酒屋になるというユニークな店である。同地訪問の折は、是非お立ち寄りいただきたい。定休日は水曜。  勘定を済ませた。去り際に「高尾山(の登り口)の行き方」をマスターに尋ねると、丁寧に教えてくれた。まったくいい人である。旅先の親切ほどありがたいものはない。礼を述べ、マエストロを出た。  高尾山に登るのは、今日が3度目である。これまでは、高尾駅で京王高尾線に乗り換え、高尾山口駅へ行っていたのだが、今回は歩きで目指すことにした。目的は金子の節約と新たな発見である。自分の足で動いてみると、思わぬところに、思わぬものがあることに気づく。それが面白いのである。  頭上に鉛色の空が広がっていた。雨の心配は(一応)要らないようだが、野外活動向きの天候とは云い難い。が、今日を逃すと、年内登山の機会を喪失する危険性がある。思い切って、来てしまった。あとは運任せだ。雨男の運など、あまりアテにはならないが……。  しばらく歩いていると、左手に「黄金色の大型建造物」が現われた。興味を覚えたが、登山を優先することにした。車道沿いに伸びる歩道を歩いた。歩きながら、ラジオを聴いていた。  コロッケ氏が現在稽古中の芝居の話をしていた。水戸黄門とウルトラマンが共演する破天荒なものらしい。両雄がどういう形で、相まみえるのか、俺の脳では想像もつかぬ。好奇心が湧くが、観劇の機会はおそらくあるまい。  高尾山口の駅界隈はかなり賑わっていた。曇天の平日で、この賑わいなのだから、好天の休日は、大変な混雑になるに違いない。勢い、ケーブルカーは「3時間待ち」になるそうな。俺にはとても耐えられぬ時間である。足で登った方が余程早い。  とは云うものの、ケーブルカーに乗ること、乗車が目的の人もいるだろうし、体力的に厳しい人もいるだろう。迂闊に否定はできぬ。俺もいずれは、同車の世話になる。しかし今は、その段階ではない。利器に頼らず、自力で登りたいと思う。〔12月2日〕
/254ページ

最初のコメントを投稿しよう!

15人が本棚に入れています
本棚に追加