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541次元:高尾山〔二〕
今回は6号路を選んだ。出発の直前に歩数計を見た。画面に「7388歩」が刻まれていた。付属時計が「午前11時」を示していた。
腹も満たされたし、体調も悪くなかった。参道の景色を眺めている内に、俄然意欲が湧いてきた。休憩なし、ノンストップで登り切ってしまうつもりであった。俺の場合、途中で休むと、かえって、ペースが狂う恐れがある。
舗装路を経て、山道に踏み込んだ。最初は歩き辛いが、歩を進めている内に、だんだん調子が出てくる。これを俺は「山ギアが入る」と呼んでいる。
その日のコンディションによって、時間差が生じるのが興味深い。体は健康でも、心が疲労していると、なかなか入ってくれないのだ。
今さら書き述べるまでもないが、肉体と精神は密接に関係している。できれば「両方正常」を保持したい。
方法はひとつである。ストレスを溜めないようにすればいい。それが難しいのだという意見もあろうかと思うが、なんとかやってもらいたい。ともあれ、プラスにならない連中とはつき合わないことである。邪縁、絶つべし。
琵琶滝見学後、6号路に戻り、ペースを速めた。呼吸をする度に「霊気」のようなものが取り込まれ、体内が浄化される感じがする。
科学的根拠はほとんどないが、それが山の神秘というものだ。古来、山中は聖域であり、現在も不思議なエネルギーに満ちている。そのエネルギーが大勢の人々を高尾山に呼び寄せるのだ。
とび石を通過した頃、登山道とその周辺に濃い霧が立ち込め始めた。一帯の雰囲気は幻想性を増し、樹木の間から「天狗が現われるのではないか…」という子供じみた考えが脳内に浮かんだ。残念ながら、空想は空想の段階で終わり、気がつくと、山頂に着いていた。
到着後、再び歩数計を見た。画面に「13304歩」が刻まれ、時計が「11時57分」を示していた。俺にしては上出来の結果と云えるだろう。山頂界隈も大層賑わっていた。
遠足であろうか、園児の集団が一斉に弁当を広げていた。ワイワイと実に楽しそうだ。絵画的、あるいは、映画的光景と云えた。瞬間、写真が撮りたくなったが、**と間違えられると嫌なのでやめた。
下山の前に茶店グルメを満喫する予定であったが、結局やめた。ビールの誘惑も振り払った。食事はさておき、飲酒は厳*だ。事*や怪*の原因になりかねないからである。〔12月2日〕
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