2017年 〔冬の陣/師走鍋〕

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547次元:闇の死闘 「見ろ!あの動きを。あれがロボットの動きか…。まるで獣(けもの)だぞ。機械の獣、機械獣だ!」(愛蔵版107頁)  とは、やりたい放題の大暴れを繰り広げる二体の怪ロボット(ガラダK7とダブラスM2)を評した弓教授(さやかのパパ)の台詞である。マジンガーZの宿敵の名称が決まった歴史的(多分)瞬間だ。  機械獣は、ドクター地獄(ヘル)が古代遺跡に埋没していた巨人兵器を復活させたものである。過去の怪物が現代に蘇り、猛威を振るうという展開は、もうひとつの代表作『デビルマン』によく似ている。機械獣は「ロボット版デーモン」と呼んでいいだろう。少なくとも、俺はそう考えている。  機械獣軍団の編制を終えたヘルは、宿願の計画を実行に移す。世界征服である。ヘル博士もヨミ様も、どうしても「世界」が欲しいらしい。そのために、膨大な量のエネルギーを費やしている。  同計画にそれほどの情熱を注ぎ込む価値があるのだろうか?もっと他にやるべきことがあるのではないだろうか?そのような疑問を感じないでもないが、実悪とは、とにもかくにも、世界を目指したがるものなのだ。否、世界を目指すからこそ、実悪と云えるのか。  萬画の悪役が抱く野望のスケールとしては「世界」が最高であろう。これが「宇宙」や「次元」などになると、荒唐無稽の限度を超えて、失笑や興醒めを誘いかねない。深刻劇が喜劇(あるいは、茶番)になってしまう恐れが出てくるのだ。世界ぐらいが丁度いい。  注目したいのは、ヘル氏もヨミ氏も、目標は「人類支配」であって、決して「滅亡」ではないという点である。人類を死滅させてしまったら、帝王の醍醐味を味わうことができない。白骨山の頂上に王城を築いたところで、何の意味もない。二人とも優秀な頭脳の持ち主であることは間違いなく、案外いい政治をしてくれるかも知れない。  ヘルとヨミが、同じ時代、同じ地上に存在していたら、激しくぶつかり合うだろう。ダークサイド同士の戦いだから、ルール無視の大乱闘になりそうだ。手を結ぶということは、おそらくあるまい。同盟を締結するには、自我や個性が強過ぎるのだ。  両雄並び立たずや竜虎相搏つのたとえもある。休戦はあっても、一時的なもの。結局、相手の息の根を止めるまで争い続けるだろう。実力伯仲の二人だが、直接対決に関しては、ヨミ様に分がありそうだ。〔12月16日〕
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