2017年 〔冬の陣/師走鍋〕

10/15
15人が本棚に入れています
本棚に追加
/253ページ
549次元:アマゾンのタラ  職場に着いた。敷地内にあるコンビニに行き、菓子パンとコーヒー(Lサイズ)を買った。休憩広場に足を進め、空いている席に腰をおろした。  パンを齧りながら、熱いやつを(半分)飲んだ。食後、残り半分を飲みながら、田中光二の『地の涯 幻の湖』(徳間文庫)を読んだ。  冒険小説兼観光小説であり、更に料理小説の趣向もプラスした大変欲張りな…否、贅沢な作品だ。田中先生は食べることに興味がない、少なくとも、それを文章化することには関心がないと考えていたのだが、どうやら、俺の早合点だったらしい。  劇中「アマゾングルメ」と呼びたくなる料理が続々と登場する。世界一の大河は(海洋並の)食材宝庫でもあるのだ。例えば、  塩漬した肉を戻し、軽く煮込んであるようだ。〔略〕タラというよりも、新鮮なサケのムニエルを食べているようだ。あの魁偉な姿態に、こんなデリケートな味の肉がかくされているとは意外だ。(140頁)  主人公の英子さんが食べているのは「ピラルクの煮込み」である。御存知かと思うが、ピラルクはアマゾン河を代表する怪魚であり、淡水魚界の頂点に君臨する大スターである。  ピラルクの鱗は「靴べらになる…」と聞いて、餓鬼時分の俺は大層驚いたものだ。その肉を食ってしまうのだから、人類も相当な化物である。  日本に「ピラルク料理」の看板を掲げている店はおそらくないと思うが、もし機会に恵まれたら、俺も食べてみたい。どんな味がするのか、自分の舌で確かめてみたい。実際に接したら、圧倒されてしまう気もするが……。  業務終了。更衣室を出て、階段を登り、玄関を過ぎた。歩数計の付属時計が「午後6時」を示していた。ラジオの情報番組を聴きながら、坂道を下った。駅近傍の飲食街へ行った。食堂に入り、親子丼を注文した。  食前に熱燗一合。酒肴(さかな)は冷奴。壁に『オセロー』のポスターが貼られていた。鑑賞意欲を刺激されたが、公演は既に終了していた。残念。  帰宅後、シャワーを浴びた。居室に行き、円盤(DVD)再生機の中に『深夜食堂 第四部』の2枚目を滑り込ませた。第35話「たまご豆腐」を観る。子連れギャンブラー(雀鬼)に扮した豊原功補がなかなか良い。レギュラー(常連客)に加わってくれないかな。続いて、第36話「梅干しと梅酒」を観る。こちらも悪くない仕上がりであった。〔12月22日〕
/253ページ

最初のコメントを投稿しよう!