2017年 〔冬の陣/師走鍋〕

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554次元:理想の随筆  洗面所に行き、歯を磨いた。居室に戻り、円盤(DVD)再生機の電源を入れた。自動的に『深夜食堂』の再生が始まる。第39話「ハムカツ」を観る。第一のゲストは、志賀廣太郎。第二のゲストは、平田満という贅沢な布陣が実現した。二巧者が異腹兄弟を演じていた。長期間、音信が途絶えていた兄弟を繋ぐ小道具として、オセロが効果的に使われていた。  幸運にも、俺は志賀さんの芝居を直接堪能している。舞台である。青年団の作品に出演されていたのだ。容貌も声質も役者向きなのに、役者臭さのない不思議な役者さんである。深夜食堂の画面(世界)にも、違和感なく溶け込んでおられて、さすがに巧い…と、感服した。  翌朝。布団を出て、洗面所に行き、顔を洗った。台所に行き、湯沸かし器にミネラル水を注いだ。窓外に青空が見えた。沸き立ての湯で、インスタントコーヒー(ウィンター・ブレンドなるもの)を淹れた。ラジオの鉄道番組を聴きながら、熱いやつを飲んだ。  俺が愛用しているツインバード社の「手元スピーカー機能付3バンドラジオ」はテレビ音声も受信できる優れものである。電気でも電池でも聴ける。持ち運びも楽だし、デザイン的にも洗練されている。いささか大袈裟な気もするが「造形美」のようなものを感じさせてくれる。  録音能力は有していないが、同ラジオは(俺が知る範囲では)最高水準に位置している。これからも大いに活躍してくれるだろう。傑作の称号を差し上げたい。一家に最低一台は備えておきたい品である。いや、備えるべきだ。  全ての雑用をやっつけてから、近所のスーパーへ向かった。店内は年末特有の慌ただしい雰囲気で満たされていた。それは良いのだが、食べたいものがひとつも売っていないので困った。この店もつまらなくなる一方だ。食品は諦め、炭酸水とミネラル水、そして、日用品の類いを購入した。  家に戻り、荷物を置いた。再び外出した。一番近いコンビニに行き、弁当と氷を買った。帰宅後、屋根裏部屋に行き、腕立て伏せをやった。風呂場に行き、温水を浴びた。浴びてから、晩酌の支度を整えた。  酎ハイを呑みながら、星新一の『きまぐれ暦』(新潮文庫)を再読した。同書に収録されている「ショウチュウのなぞ」を読んだことで、エッセイの面白さを知った。この面白さに迫れぬままに、俺は43回目の大晦日を迎えようとしている〔12月31日〕
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