2018年 〔春の陣/睦月鍋〕

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557次元:早人と吉影  晩酌後、洗面所に行き、歯を磨いた。居室に戻り、円盤(DVD)再生機の中に『ダイヤモンドは砕けない』の18枚目を滑り込ませた。第35話「アナザーワン バイツァ・ダストその1」第36話「同その2」を続けて観る。いよいよである。いよいよ、キラークイーンの最終能力が起爆するのだ。  ジョジョ第4部、最高の山場と云っていいだろう。誰も(スター・プラチナを操る空条承太郎さえ)抵抗できない無敵の爆弾。  全スタンド中、最も好きなスタンドが、このバイツァ・ダストである。追跡者を捕捉した瞬間、殺しの女王が動き出し、大爆撃が実行される。彼女の姿を見た時、ターゲットは「既に死んでいる…」というのだから恐ろしい。  命中率十割。標的の肉体は粉々に破壊される。爆殺終了後、時間が(1時間程度)巻き戻されるのが、バイツァ・ダスト、最大の特色である。  同スタンドの操作者である吉良吉影にとって「都合の悪い展開」は跡形もなく消し去られ、長針と短針は「改めて」時を刻み始めるのだ。  バイツァ・ダストは「歴史修正能力」とも云えるわけである。まったく、荒木先生はとんでもないことを考えつくものだ。もちろん、無から有はなかなか生じ難い。読書体験や鑑賞体験を「創作の栄養」として、確実に吸収されているのが、先生の偉いところだ。  素材の仕入れ感覚も抜群だが、アレンジのやり方もまことに巧妙である。まさに天才の仕事…と、云うしかない。  バイツァ・ダストは「憑依型スタンド」に分類される。とり憑き先に選ばれたのは、川尻家の長男、早人である。根暗少年は怪物吉良吉影に「人間地雷」に変えられてしまった。  早人が父親の仇敵(かたき)である吉良との対立を経て、徐々にナイトとしての自覚に目覚めてゆく過程が、第4部の見所のひとつになっている。   早人の母親は、どういうわけか、殺人鬼に「ぞっこん」で、ほとんど頼りにならない。吉良という巨悪が家庭に入り込んできたことが契機となり、少年の内面で眠っていた「正義の心」が発動したのだ。  吉良はジョジョ史(と云うか、マンガ史)に輝くビッグキャラクターだが、彼が有するあまりにも強烈な毒気(個性)が、早人を端役から、主役級に押し上げたような気がしてならない。おそらく、先生自身も(当初は)ここまで大きい存在になるとは考えていなかったのではあるまいか。〔1月7日〕
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