2018年 〔春の陣/睦月鍋〕

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560次元:茶頭と太閤  手元の『日本人物総覧 歴史篇』(新人物往来社)で千利休を調べてみると、  早くから茶の湯を好んで〔略〕奈良・堺の豪商と交わった。やがて織田信長に仕え、ついで豊臣秀吉に仕えて、茶頭として天下一の茶匠となり、北野の大茶会などを催した。  秀吉の怒りにふれて自刃した。理由は、秀吉からの娘お吟の召出しに応じなかったこと、利休が自分の木像を大徳寺に安置したこと、新しい道具を法外な高値で取引したことなどがあげられるが、定説はない。(344頁)  と、ある。利休切腹の理由は謎に包まれている。今後、決定的な資料でも発見されれば別だが、現時点では「わからない」としか云いようがない。  映画などでは、利休の才能を過剰にうらやみ、嫉妬に狂った秀吉が強引に腹を切らせた(殺した)ことになっている場合が多いようだ。迂闊なことは書けないが、実際もこれに近かったのではないか。  現在なら、まさか「殺す」ことはあるまいが、戦国日本の場合は違う。逆らう奴や気に入らない奴は、この世から消してしまうのである。まったく恐ろしい時代である。戦国時代の人気は根強いし、俺自身、相当な興味を覚えているが、当時の日本に生きてみたい(住んでみたい)とはあまり思わない。  利休を「大芸術家」として描こうとすると、自然、秀吉は「俗物代表」として描かれることになる。両雄の対比と対立が、芝居(物語)を動かす原動力というわけだ。俳優の眼には、利休役よりも、秀吉役の方が面白く見えるような気がするのだが、どうだろう。  おそらく、利休と秀吉は、ある時期まで、良好な関係を保っていたのだと思われる。それが、どこかで致命的に瓦解したのだ。陰険秘書の三成君が、意欲的に暗躍していた気配を感じるが、感じるだけで、確証はない。  洗面所に行き、歯を磨いた。居室に戻り、円盤(DVD)再生機の中に『マスケティアーズ』の3枚目を滑り込ませた。仏…ではなく、英国放送協会制作の三銃士もの。本国では2014年に、日本では2016年に放送された。いささかマンガっぽい感じもするが、なかなか楽しませてくれる。  マンガっぽいのは、同作品に限らず、世界的(多分)傾向のようである。日本などは(良し悪しはさておき)マンガだらけの有様だ。  いい俳優が大勢出てくるが、最も印象的なのは、枢機卿役のピーター・カパルディである。〔1月14日〕
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