2018年 〔春の陣/睦月鍋〕

8/12
前へ
/254ページ
次へ
562次元:伝説の意味  仕事が終わった。疲労は然程感じないが、空腹であった。更衣室に行き、着替えを済ませた。部屋を出て、通路を進み、自動階段に乗った。自動扉を過ぎ、外に出た。歩数計の付属時計が「午後6時」を示していた。  ラジオを聴きながら、暗い坂道を下った。横断歩道を渡り、住宅街を抜けると、視野に飲食街が現われた。車道の脇で、威勢のいいお兄ちゃんとお巡りさん数人がなにやらもめていた。  ビルの2階にある中華レストランに入り、夕飯をしたためた。食前に清酒二合。酒肴(さかな)は海老とキャベツを和えたもの。店内に設置された大型テレビが報道番組を映し出していた。が、音声が聴き取れないので、内容の半分ぐらいしかわからない。食後、池袋へ移動した。  帰宅後、風呂場に行き、熱めのシャワーを浴びた。体を拭き、服を着た。居室に行き、ラジオの電源を入れた。ラジオ第1の『NHKジャーナル』を聴きながら、焼酎の水割りを呑んだ。今宵、2度目の晩酌である。さかなはコンビニで買ってきた「おつまみ胡瓜・大根」なるもの。  洗面所に行き、歯を磨いた。居室に戻り、円盤(DVD)再生機の中に『妖怪百物語』を滑り込ませた。1968年に公開されたもの。妖怪以上に妖怪的な悪党どもを、本物の妖怪がやっつけるという痛快な筋である。  ストーリーはシンプルだが、技術的にも、映像的にも、相当な水準に達している。今、同等の映画を撮ろうとしても、おそらく、撮り切れまい。 「デーモンと出会うことのなかった人間がなぜ!悪魔のことを知っている!?〔略〕悪魔の伝説の意味はなんだ!?〔略〕悪魔、鬼、狼男、吸血鬼、天狗、河童など、世界じゅうにある妖怪の伝説は、デーモンではないのか…」  とは、原作の序盤に出てくる飛鳥了(サタンの化身)の台詞である。飛鳥説に従うと、ろくろ首も、からかさ小僧も、油すましも、ぬらりひょんも、みんなデーモン族…ということになってしまう。どうも、イメージが合わぬ。  西洋妖怪と比べると、日本妖怪はどこかユーモラスで、人類の天敵という感じは希薄である。もしかすると、彼らは、デーモンではなく、デビルマンだったのかも知れない。人智の及ばぬところで、デーモンの侵攻を防いでくれていたのかも知れない。云わば、不動明の先輩格である。両者が共演する番外篇が観たいものである。誰か、作ってくれないかな。〔1月20日〕
/254ページ

最初のコメントを投稿しよう!

15人が本棚に入れています
本棚に追加