2017年 〔秋の陣/長月鍋〕

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2017年 〔秋の陣/長月鍋〕

500・5次元:闇鍋の再開  眼が覚めた。枕辺のアナログ時計が「朝の7時」を示していた。台所に行き、湯沸かし器にミネラル水を注いだ。沸き立ての湯で、抽出式のコーヒーを淹れた。三立製菓の源氏パイを食べながら、熱いやつを飲んだ。  二杯目のコーヒーを飲みながら、井沢元彦の『真説「日本武将列伝」』(小学館文庫)を再読した。井沢先生の石田三成論を興味深く読む。  個人的にはあまり良い印象は抱いていないが、三成が優秀な人材であったことは確かだ。関ヶ原の決戦で徳川家康に敗れたため、不当な扱いを受けている部分もあると思う。歴史は勝者が作るもの。敗戦の将軍に吹く風はブリザード並に冷酷である。  同じ敗将でも、真田幸村みたいにスター性があると、全然違ってくるのだろうが、残念ながら、三成には「華がない」のだ。もっともこれは本人の責任ではない。華や人望は、努力や研鑽を積んで得る(得られる)ものではないからである。ある者にはあるし、ない者にはないのだ。  厄介なのは、ない人があるように振る舞うことで、これをやられると、家庭にしろ、会社にしろ、内部崩壊は避けられない。ないならないなりに振る舞う方法があるのだが、当人に改める気がまったくないので、どうにもならない。  かの三成も、友達(大谷吉継)の忠告を聞き入れず、破滅、いや、自滅を招いた。あの戦争、勝てる機会が幾つもあったと云われている。が、チャンスの芽をことごとく踏み潰してしまった。この辺り、負けるべくして負けたという感じがする。  洗濯と雑用を終わらせた俺は、家に戻り、愛機を起動させた。ぴよぶっくを呼び出し、新作作成の画面へ飛んだ。新作と云っても『次元鍋』の続きに過ぎぬわけだが、準備を進める際のワクワクする気持ちに変わりはない。  次元鍋の幕をおろした最大の要因は、身辺のゴタゴタであった。意欲そのものはあるし、文章の材料にも困らないが、決着がつくまで、再開は控えようと考えていた。  一ヶ月ほど様子を見ていたが、事態好転の気配はなく、おそらく、この泥沼地獄は、俺が生きている限り続くであろうことを悟ってしまった。  年齢の所為か、生活に安定を求めるようになったが、我が人生に安定など元々ありえないのである。生涯不安定。それが俺だ。やりたいことは、先延ばしせずに即やる。草随筆が書きたければ、書けばいいのである。だから、始めた。〔9月30日〕
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