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この作品が大ヒットした理由。
それは、「じらし」のテクニックかと思います。
恵麻が靖貴を好きだってことは、読者に早い時期に分かります。
ところが恵麻の一言が原因で、靖貴と恵麻は離れてしまい、うまくいかないまま卒業を迎えます。
読者としては、
「ラノベだからハッピーエンドのはず!だけどどうなってるんだ」
と気が気でなくなる。
このあたりの「じらし」は絶妙です。
恵麻は自分の失言が原因だったと気がつく。
けれどもなんとなく
「ごめんね」
の一言が言いづらく、離れたままの状態。
しかも靖貴の方はというと、恵麻の友人といい関係になってくる。
スクールカーストの最底辺の設定はどこへ行ったのか?そうつっこみたくなるくらい、靖貴はもて始める。
それでも恵麻のことが気になって、それ以上、発展することはない。
じゃあ、自分から恵麻にモーションかけたら!
読んでいてそう思うんだけど優柔不断のまま。
読んでいて、だんだんじれったくなる。
最後には、とうとう恵麻を忘れるため、山形の大学へ進学しようとする。
どうなっちゃうの?
この二人・・・
散々、読者をじらしておいて、最終盤で大逆転があります。
このあたりのテクニックは、読んでいても
「巧すぎる」
と感動してしまいます。
最終盤の大逆転!しかもその直前にはきまずく別れている。
この部分は本当に読んでいて、こちらもハッピーになって来ました。
是非読んで確かめてみて下さい。
「じらし」を効果的にするためでしょう。
この小説は登場人物が多いのです。
靖貴と恵麻のほか、靖貴の数少ない友人の斎藤克也、恵麻の親友の磯貝久美子、靖貴の中学時代からの友人、田村ななみ。
どのキャラクターも、ストーリー上、靖貴や恵麻と深く関わってきます。
それ以外にも二人に絡む重要なキャラクターが何人か出るので、十名以上の主要キャラクターが登場することになります。
登場人物は多いようにみえる。
けれどほとんどが、「単なる友人」のようなモブキャラといった小説はよく見かけます。
そうではなくて、数多いキャラクターがかなりバランスよくストーリーに配置されて靖貴、恵麻にからみます。
そのため二人っきりになるシーンが少なくなる。
ほかのキャラクターとの絡みの中で靖貴、恵麻のメインストーリーが進行していきます。
勢い、読者のじれったさも次第に頂点ということで、多くのキャラクターを設定した点が、ここで効果を挙げていると思います。
読者が二人を応援したくなるようのに誘導する絶妙な構成だと思います。
この小説は大賞受賞作品で十三万部の売り上げを記録したヒット作です。
読めば色々と勉強になると思います。
僕も本当に勉強になりました。
ただですね。
この小説がラノベのスタイルに沿って書かれていると書きましたが、主人公の靖貴のキャラは、女性が読むと身勝手で好きになれないキャラクターかもしれないと思っています。
女性の方の感想を聞いてみたい気がします。
(三冊目終了)
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