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「美砂はね、ずーと人を好きになるってわからなかったんだって。だから誰とも付き合わなかった。どんなに好条件の男に告白されても。」
「でも恵とそばにいて、初めて愛しいって思ったって言ってた。面倒くさいとか、世話がやけるとか、そんなのどうでもいいくらいにもう好きになっちゃったって。」
夏菜子はふふふ、と満足げに話した。
美人だが付け入る隙をみせず、どこかいつもさめていた美砂がどんどん丸くなっていく過程を目の前で見てきたのだ。
「美砂は、、後悔してませんでしたか、、同性の私と付き合って。」
「両親の事では悩んでたわ。話すのを。でも、後悔なんてしてなかった。少なくとも私達の前では。」
良かった。そうほっとする恵の手を見えない所で繋ぐ悠莉。
「ありがとうございました。次は行った所に行こうと思ってます。」
「そう。悠莉ちゃん、いつでも相談のるから連絡してね。」
「ありがとうございます。」
夏菜子と南の連絡先を交換し、先に帰らした。
新しいお酒を注文し、ちびりと口につける。
「いつまでもほっとけない子だわ。」
「幸せになってほしいわね、、あの子と。」
「南は?良い人いるの?」
「いないわよ。×1で子持ちの40代相手に。」
「ふーん?」
「でも、いつまでも意気地なしを待つ気はないわよ?」
「、、、、、。」
夏菜子はぐっと苦くなったお酒を流し込んだ。
「少しは恵を見習って、手を差し出してみたらいいのに。」
「子供が、、可哀想でしょ、、、、。」
「それを決めるのは、夏菜子じゃないわ。」
お開きお開き。南はそういってお金をテーブルにおき、個室を出ていった。
意気地なし。
夏菜子の肩に重くのし掛かるその言葉は、もうずっと何年も付きまとっていた。
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