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約30分ほど登った所で休憩所についた。
本当に手頃に登れる山らしく、軽装できているカップルや老夫婦、平日だが子供連れもちらほらといた。
「お腹は空きましたか、お嬢さん。」
「ペコペコ。」
「なら良かった。景色と空腹で、普通のご飯も美味しく感じるはずだよー。」
割りばしに取り皿、ウエットティッシュ、飲み物。用意は万端だった。
そしてお重のようなお弁当箱には、リクエストしたおかずが全て詰め込まれている。
「え、、、全部、作ったの?」
「そだよー。」
「全部、、作ってくれると思わなかったから、、私、凄く多く書いちゃったのに。」
「あはは、さすがに多いな!とは思ったよ。」
さらっと笑って言う三嶋に、相原は泣きそうだった。
運動会や遠足の日にだって、こんなに作ってもらったことはない。
「残してもいいからね?」
「やだ。」
「やだって、、。お腹いたくなるよ?」
「食べるったら食べる。」
三嶋のいうとおり、食べ過ぎて動けなくなり、帰りはすっかり日が傾いてしまったが、文句をいうでもなくずっと手を繋いでゆっくり山を降りてくれた。
まるで、道しるべをつけられたように。
安心してこの道をあるけるよと言ってくれてるようだった。
「ありがとう、お弁当。美味しかった、、。」
「うん、全部食べてくれてありがとう。」
暗くなったからとタクシーで家のギリギリまで見送る三嶋は、もう大人の顔をしていた。
「また連絡するね、おやすみ。」
「おやすみ、なさい。」
手をふるわけでもなく、ニコリと微笑みタクシーに声をかける三嶋。
喉まででかかった言葉は、最後まで出てこなかった。
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