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キスをしたい。
相原はハッキリとした目的をもって、昼間のデートを三嶋の家でと提案した。
こんな時、実家暮らしがとても歯がゆい。
「本当に何にもないよ?うち。」
「いいの。」
二人っきりになりたい気持ちを察してよ。
相原はむぅと少し唇を尖らし、スーパーでカゴを持つ三嶋の袖を掴んで後を歩いた。
「何か飲みたいものある?」
「水。」
「ウォーターサーバーあるから、それはいいかな?食べたいものは?」
「、、、魚?」
特に考えず思い付きで言えば、サーモンがお得だったようで刺身を指した。
「これを漬けにして食べようか。生魚は食べれる?」
こくっと頷けばメニューが決まったのか、ぽいぽいとカゴに食べ物が滑り込んでいく。
かいわれをそっと元に戻すと、かわりに大葉が入れられ、手をつけないのを確認すると、またゆっくりと店内を歩き出した。
三嶋はきっと知らない。
それだけでくすぐったいほど心がムズムズすることを。
「はい、相原さんはこっち持ってね。」
明らかに軽い荷物を差し出され、空いた手を差し出された。
ずっと店内で握るのを我慢していたのをわかっていたようだ。
握った手はいつもよりほんのり力が入っていたような気がした。
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