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カウンターキッチンに立ち、手早くサーモンを切り、ヅケの用意をする姿は普段から料理をしなれているのを頷ける。
そして本当に三嶋の部屋は物が少かった。
ソファーとテーブル、テレビ、棚、のみ。
床に木のゴミ箱が置かれてるのが更に物の少なさに拍車をかけているようだった。
「普段はテレビみてるの?」
「普段は、、うーん、珈琲いれてベランダで外を眺めてるかな。うち、川が見えるから。」
指差した方向は、あの桜が見えた川岸だった。
「相原さんは?普段家で何してるの?」
「私は、家のこと大体してるかな、、。」
「そうなの?家族想いだね。」
「別に、、する人がいないだけ、、。」
「それでも偉いよ。」
ふんわりと微笑み、柔らかい口調。
三嶋の言葉に泣きそうになる。
「ねぇ、聞いていい?」
「なに?」
「ベランダでいつも何を考えてるの?」
それは、踏み込んではいけない事だとわかっていた。
三嶋は過去の事を話したがらない。
人の事はきくのに、肝心の自分の事はふわりふわりと流していく。
「何も、、考えたくなくて、見てるかな。」
それはきっと本当のこと。でも核心ではない。
相原は仕込みが終わった三嶋の手を引っ張った。
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