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「降りて、相原さん。冷静に話し合おう。」
こんなにも自分は必死なのに。
三嶋の落ち着いた声は、逆撫でするには十分過ぎる材料だった。
パシンッ
乾いた音が室内に響く。
生まれて初めて人をビンタした。
「意気地無し、、、!!!」
叩いた手は痛くて、震えが止まらなかった。
なんで、なんで分かってくれないの。
そんな言い訳と叩いてしまった罪悪感が頂点に達してどっと目に熱いものが込み上げたその時、
ゆらっとした怒りが三嶋から漏れた。
「相原さん、いま、すぐ、降りて。」
怒鳴りたい気持ちを抑え、聞いたことのない低くゆっくりした声が背筋に冷たいものを走らせた。
正直腰に力が入らなかったが、何とか身体をずらせば、三嶋はゆっくりと立ち上がり、見たことのない冷たい視線で見下ろされる。
恐怖で声がでなくなった。
怒らせた。本気で怒らせてしまった。
そう察した時には、手のひらの痛みはもう感じず、肩が震えた。
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