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満開、とまではいかないが、咲き終わりで地面は桜の花びらが散らばり、緩やかな風でゆらりゆらり舞う桜はとても情緒がある。
綺麗だが、終わりが見えて少し寂しくて。
まるでこの子のようだと珈琲カップを握ったまま下をむく彼女を横目に見た。
「さっきのは、彼氏さん?」
1度だけコクンと頷く。
「お節介したと思ってるよ。もし、これであの彼氏さんと別れるってなったら、責任もって新しい人を紹介する。君がまた恋愛したいなら。」
「私は、、、ただ、一緒にいれただけで良かったの。」
健気な言葉に、やはり自分の行動はお節介なだけだったかと、眉間に皺がよった。
「でも、相手はそうじゃなかった。いつもそう、、、相手が望むものと私は一緒じゃない。」
「いるよ、一緒の人。今はまだ出逢えてないだけで、絶対いる。」
カサッと紙袋からクッキーをだし、差し出した。
「私もそうだったから。諦めてたけど、突然出逢えた。」
「今も、、、?」
「もう逢えなくなっちゃったや、、、。」
これ以上深く聞いてほしくない。その雰囲気を読んだのか、彼女は受け取ったクッキーをじっと見つめた。
色白な彼女の腕がやけに寒そうに見えた。
「責任、、、、。」
「ん?」
「責任、とってください。」
決意にも似た、はっきりとした声に少々驚きながら、
「わかった。じゃ、どういうタイプがいいか聞こうかな。年下?年上?」
努めて明るく聞けば、彼女は顔をあげ、まっすぐと三嶋の顔をみた。
目が大きく、左右対称であろうその顔のパーツ、何より強い意思をもった瞳に思わず綺麗だと場違いな気持ちがわいた。
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