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「ねぇ6年付き合った人の事は、覚えてるの?」
ひとしきりぐずり終わった後、彼女の腕の中で疑問をあげた。
思い出すというなら、遠慮なく聞こうと。
すると恵は「うん」と頷き、苦々しい顔になった。
「あの子はね、、、ちょっと、、ハードモードというか、、、。」
「激しい人だったの?」
「うーーーん、うん、、、。」
言いたくないのか、どう言葉に表していいのか迷っているのか。
話さなくてもいいよ、とは言わず言葉を待っていると、おでこにチュッとキスをされてから恵は話し出した。
「凄く束縛が酷くて、怒るとすぐ手が出る人でね。職場にも来て人間関係さぐって、よく痣やら怪我してた。携帯もすぐ壊されてて、連絡つかなかったり。」
ざっと聞いてもまったく良さがわからない人だった。
「で、浮気もしてて。妊娠したから結婚するって突然言い出して、共通で貯めてたお金も全部引き出して出てかれた。」
「好き、、、だった?」
「初めて付き合った人だったから、舞い上がってたのはあったかな。そんな風にしてしまった自分が悪いって思ってて。」
「そんなことない。恵さんが優しすぎただけ、、、。」
「優しくないよ、、、。その子の旦那ね、子供が産まれたらDVが酷くなったらしくて。助けて欲しいって連絡きたけど、、私、断ったんだ。親か警察に相談してって。」
「でも、、次の日、赤ちゃんもその子も亡くなった。怪我が二人とも酷かったみたいで、、、。私が見殺しにしたようなものなんだよね、、。」
違う、そんな事ない。
そう言いたかったが、散々言われてきただろうその台詞はもう出せなかった。
長い年月をかけて、彼女は折り合いをつけてきたのだと。
「で、灰人みたいになった私を助けてくれたのが、次の恋人。職種が一緒でね、色々世話をやいてくれたみたい。」
「どこまで、覚えてるの?その人のこと。」
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