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父親は、営業一筋30年。
他の部署に異動になったことがないと聞いた。
営業部内での異動はしているようだけど。
そして、その昔、母親も営業部勤務だったことがあって、その縁で結婚したとか聞いたな。
詳しいことは、母親は教えてくれないし、父親のいうことろの
俺がカカを好きになったけど、カカは相手にしてくれなかった
というのも、どこか冗談っぽいし。
「トトは、女性社員を怒って泣かせたの?」
ワクワクしながら妹が聞いている。
「なわけねーだろっ! 仏の次長がそんなことするわけねーだろ!」
仏の次長って、死んでるって意味か?
さすが父親、変な人だ。
「仏の次長って何? 死んでるの? アーメン!」
「俺を殺すな!」
母親と俺は似たような思考回路らしい。
さすがにアーメンとか、俺は言わないけど。
「トトは殺しても死なないでしょ」
妹よ、いいことを言った、俺もそう思う。
「死ぬなら腹上死がいいな、カカのグエッ!」
どうやら、母親の足蹴りにあったみたいだ。
父親が母親の方を軽く睨んでいる。
母親は、そんな父親に笑顔を向けて、さっき、俺から取り上げられたビールのグラスを今度は母親が奪ってグイッと飲んだ。
「あっ、こら、俺のビール」
「ぷはぁ。それじゃ、次長がまた女性社員を泣かせた話をしようかな。ねー、酒井次長?」
にっこりと笑う母親に、何も言えなくなって、目まで逸らす父親。
「やめろよ、子供が俺に惚れ直しちゃうだろ、そんな格好いい話したら」
ブツブツと変なことを言っている。
そして、妹が小さな声で
「惚れてないから惚れ直さないな」
と、言っている。
父親に聞こえたらショック、受けそう。
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