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プロローグ
「お前、これから五日間、写真を撮ってこい。自分が一番良いと思うのを。オレが良いと思わなかった時はお前の大事なものを一つもらう」
「は? え? 何それ」
目の前のデカいカラスが、唐突に僕にこう告げた。
つーか、カラスが喋るってなんだよ。伝令か? 鬼狩りか? いや、カラスが喋ることだけはしってたよ。でも、普通はキュウカンチョウやオウムみたいに、覚えた言葉を真似するだけのはず。なのにコイツは自分の意思を話してるように見える。
「お前はオレたちの大事な仔を取り上げた。その報いを受けてもらう」
黒々とした羽を広げ、同じく黒々とした瞳でギロリとこちらを威嚇する。
確かに、今僕の手の中には巣から落ちた雛ガラスがいる。どう見てもまだ飛ぶことも、ひとりでエサを取ることもできない産毛の雛だ。このままにしていたら確実にヤバいと思い抱き上げてしまった。けど、人間の匂いがついた雛は育ててもらえないことがあるのを思い出した。雛が育ててもらえないどころか、これ僕自身もヤバくないか?
やっぱり放っておくんだった。
いつもそうだ。
余計なことをすると、こういう目にあうんだ。
まったく。
あぁ、嫌だ。
だから、教室の僕は居ても居なくてもどちらでも関係ない。特に関心を持たれることもなければ、疎まれることもない。誰にも関心を示されない存在だ。そう無色透明の空気みたいな存在だ。
「写真って……なんで?」
「オレたちはキレイなモノが好きだ。だから、お前ら人間がキレイだと思うものにも興味がある」
なんだその理由……。
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