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「そうだな。まずは空だ」 「空? 空なんていつも見てるでしょ。人間より近くで」  どう考えても飛びながら見る空の方が、地上で見るより何倍も凄いと思うけど。なんでわざわさ……。面倒くさいな。 「だからだ。人間はオレたちみたいに飛べないからな、お前らからはどんな風に見えるのか知りたい。明日、この時間までにここに来い」  それでけ言うとカラスは翼を広げ飛び立ってしまった。  明日同じ時間に来いって……  ホント勝手……  写真なんて別に好きでもないのに。僕にどうしろって言うのさ。 「お前の父さんって……。ハァ……。何でもない」  僕の手の中でモゾモゾと動く雛ガラスが、僕を見つめて大きく口を開ける。 「わかった。ごはんね」  また、落っこちたりしないようにしっかり抱えて家路を急いた。 「確かこの辺に……、あったあった」  母さんは鳥が好きで、ずっと飼っている。  餌をあげるためのシリンジも餌も、鳥かごの側の棚の中に閉まってあった。 「ほら、今ごはんにするからなー」 「ギュルルー!」 「分かったって。ちょっと待ってな」  空なんて何を撮ればいいのさ?  空、空、空……  腹がふくれて、気持ちよさそうに目を閉じた雛ガラスを横目に思案をめぐらす。
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