無色透明

花

「次は花だ」
　横暴なカラスは頭の上からそう言って去っていった。

　花か、空よりは簡単そうだな。
　春だし、たくさん咲いてるはずだ。
　明日、あそこに行ってみよう。

　今日も朝から、バッグに雛ガラスと餌を入れると外に出た。
　この時期に花がたくさん咲いていそうな場所を目指して、自転車を飛ばす。きっとあそこならいろんな花があると思う。行くのは小学生の時いらいかと思いを巡らしながらペダルを回す。

　小学生のころはよくこの公園で遊んだな。この公園は僕が通っていた小学校の少し先にある、ここいらでは一番大きな公園で、噴水や大きな花壇もある。子供たちはあちこちで、小さなグループを作り、思いおもいの遊びに夢中になっている。ここのすべり台もブランコもこんなに小さかったっけ？　昔はもっと大きいと思ってた。その横を通り抜け、園の中心の方にある噴水近くの方へ向かった。

　噴水の周りには思った通り、色とりどりの花が咲いている。
「良かった。たくさん花が咲いてたよ」
　バッグの中の雛ガラスをちらっとみると、出てくる前に餌をたっぷり食べたせいか、まぶたを閉じて無防備な姿をしている。僕はスマホを取り出すと、花壇の花を画面におさめていった。