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「……ソレ、何とかしてくれないか?」
「それ?」
予期せぬ蒼士の言葉に首を捻る。
それ……って、何?
私が要領を得ない返事をしたからか、蒼士が仕方なく顔を上げて私に視線を向けた。蒼士が見ているのは私の顔ではなかった。彼の視線を追って目線を下げていくと、自分の胸元へと辿りつく。
「ぎゃあ!」
ヤバい。恥ずかし過ぎてヘンな声が出た。
ついさっきまで、散々、蒼太くんに嬲られてすっかり勃ちあがった乳首がニットのカットソー越しにポチっと盛り上がっていたのだ。
ぎゃあ~! 恥ずかしい!!
慌てて蒼士に背を向けて、ズレた下着を直そうとしていると、
「ソレ……俺が何とかしていい?」
「は?」
――今、なんか意味不明の発言が聞こえた気がするんだけど。
「……蒼太はよくて、俺は駄目なのか……」
低い声で呟いて、うなだれる蒼士。
わかりやすく落ち込んでいる。
え? え? え?
なんかキャラ違くない!?
わー! お兄ちゃん、拗ねないでー!!
「い、いや、ダメじゃないけど……けど、え? やっぱり交渉って、その交渉!?」
おっと。混乱し過ぎて、自分でもなに言ってるかわかんなくなってる……!
「そうだった。まずは謝らないとな。……昨日はごめん」
蒼士はそう言うと、胡座をかいてる両膝に手をついて深く頭を垂れた。
「ん? なんの謝罪?」
私が素朴な疑問を口にすると、
「昨夜、朱莉に嘘ついて家に連れ込んだから。だから……ごめん」
「嘘、って……」
「『弟がいる』って言ったこと。まぁ実際いたんだけど……ほんとは留守のはずだった」
その話、ホントだったんだ。さっき、蒼太くんが言ってたこと。
「そんなの、謝る必要ないよ。私だって二人と一緒にお酒飲めて楽しかったし。ちょっと飲み過ぎちゃったけど」
「それは俺も反省してる。もっと早く止めておけばよかった。そうしたら、蒼太に先を越されることもなかったのに」
「先?」
「首のソレ見たとき……ほんとにムカついた」
蒼士が私の肩を掴んで首筋に顔を埋めた。
今朝と同じ動作だったけど、今度は噛まれなかった。
その代わり――思いっきり吸いつかれた。
「ちょ、ちょっと! 蒼士、痛い……」
私が小さく悲鳴を上げると、蒼士は一旦唇を離した。今度はペロペロと犬のように、いま自分が吸いついた辺りの肌を舐め始める。
「んっ……蒼士、待って。……んぁ、そこはダメだって……」
いつのまにか蒼士の左手が私の胸を包んでいた。ニットを押し上げて膨れ上がった胸の先っぽを蒼士の爪がカリカリと引っ掻いてくるからーー
「あっ……ん、ぁあ……っふ」
蒼士の指が触れたところから、ビリビリと電流のような快感が背筋を駆け抜けていく。
「……本当は昨日、あわよくば、こういうコトしようと企んでた。ごめん」
また謝って、私の体から離れていく蒼士。
「え? ここで終わり?」
ついつい漏れた心の声。
蒼士が驚いたように、一瞬、目を丸く見開いた。
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