朱莉、かまぼこで餌付けされる

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***** 「あぁ、朱莉も観たのか? 実は海斗さんの動画作るの、手伝ってるんだよ」  私の作ったイカスミパスタを口に含みながら、蒼士が言った。 「え、なんで? 蒼士と鮫島さんって、そんなに仲良かったっけ?」 「高校の頃はそうでもなかったけど……。社会人になってからかな。うちの会社が魚貴族で使ってる業務システムを請け負ってて、俺も昔そのプロジェクトにいたから。その関係で再会したんだ」 「そうなんだ。システムかぁ……そういえば、魚貴族にもいたもんねぇ、ペッパーくん」  レジの片隅で項垂れていた憐れなロボットを思い出す。紺色の地に白い波模様の入ったハッピを着せられていたっけ。 「……いや、ペッパーくんはうちでは扱ってないから」  蒼士が唇を黒く染めながら生真面目に答えた。 「それより、海斗さんに会いたいなら、今度の撮影に朱莉も来るか?」 「え!? いいの?」  願ってもない提案。  さすが蒼士。 「うん、海斗さんには連絡しとくよ。来週の土曜日だから」 「わーい、ありがとう。予定空けとくね」  自分でも意識して可愛らしく言ってみたら、蒼士が目を細めた。彼の目尻に私の好きな笑いジワが浮かんでいる。ふふふ。  この時の私はまだ「海斗さんに会ったらサインしてもらおっかなー」とか「撮影を手伝ったら魚貴族のクーポン貰えるかなー」とか、とにかくお気楽でミーハーな想像しかしていなかった。  だって、すぐ隣には当たり前のように優しく微笑む蒼士がいて、これ以上ないくらい幸せな気分だったし。  だから、まさかこの出来事をきっかけに……あんな()()()()に巻き込まれることになるなんて、夢にも思っていなかったのだ。
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