朱莉、かまぼこで餌付けされる

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「あ、堀ノ内さん。せっかくだから、連絡先教えてよー」 「いいですよー」  美味しいお酒をいただいて、すでにほろ酔い気味の私。鮫島さんに促されるまま、気持ちよく連絡先を交換する。 「朱莉。飲み過ぎんなよ」  声のした方に顔を向けると、眉間にシワを寄せた蒼士の不機嫌そうな表情が目に入った。 「蒼ちゃん、過保護だねー」  機嫌の悪そうな空気を醸し出す蒼士に鮫島さんが茶々を入れる。 「あれ。そういえば二人は付き合ってんの?」  白い方のはんぺんを頬張りながら、鮫島さんが蒼士と私を交互に見つめた。  わ。蒼士、なんて答えるんだろう? 「……鋭意交渉中です」 「何だよ、それ?」  蒼士のどっちつかずな答えに鮫島さんが笑った。 「ま、それぐらいの時期が一番楽しいわな」  そう呟いた鮫島さんの横顔がふいに翳る。  なんだ、今の憂いを帯びた表情は。  大人の色気がダダ漏れなんですけど。  はんぺんを飲み込んだ拍子にゴクリと上下した喉仏もやたら色っぽい。  まぁ我々もすでにアラサーですからね。  もう十代の高校生ではないですから。そりゃ色々ありますわな、鮫島先輩も。 「堀ノ内さん。よかったら、これ飲んでみて。京都の蔵元さんから取り寄せてるやつで、スッキリしてて飲みやすいから」 「わぁ。いただきますー」  私がお猪口を差し出すと、すっかりいつもの調子に戻った鮫島さんがお酌をしてくれた。  至れり尽せり。  いいんだろうか……なんにも手伝ってないのに。 「ささ、じゃんじゃん飲んで」  ま、いっか。  たまにはこんな幸運な日があってもいいよね? 「朱莉、飲み過ぎんなよ」 「はは、蒼ちゃん、過保護ー」  このやり取り、何回目?  ま、いっか。
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