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正直に白状すると――。
年下のイケメンくんに意味深に微笑まれて。
全然、まったく、一ミリも期待しなかったか……と言えばウソになる。
でも、ここでホイホイついてったら、それこそ蒼士に合わせる顔がない!
さすがにそれくらいの理性は残ってた。もう酔いは覚めてるし。
だから、そう……踏みとどまったさ。
「待って待って待って。ホテルはムリ! 無理無理!!」
首をぶんぶんと千切れんばかりに振って断固たる態度でお断りする。
「ふ~ん。じゃあ、ウチ来る?」
「え?」
「大丈夫。兄さんもいるはずだし。それなら問題ないでしょ?」
まぁ二人きりじゃないならいいか。いいのか?
しかし、このやり取り、つい一日前にも蒼士と交わしたような……?
デジャヴか。
「なにぶつぶつ言ってんの? ほら行くよ」
声に出ていたか。恥ずかしい。
羞恥のあまり身悶える私の手をぐいっと握りしめて蒼太くんがスタスタと歩き出した。
華奢な見た目に反して、けっこう力が強い。
私はされるがまま、親に手を引かれた子供のように蒼太くんに引きずられていく。
数時間ぶりにお邪魔する藤沼家はひんやりと暗く静まり返っていた。
蒼太くんがリビングの電気を点けてエアコンのスイッチを入れる。
「あれ? 蒼士は?」
「んー? 知らない」
「は?」
「月曜までに復旧しなきゃいけない障害があるとか言ってたから、今日は会社に泊まり込みじゃないの」
「えぇ……!?」
そういや、蒼士ってSEなんだっけ?
「でもその方が都合いいでしょ。昨日の話をするんなら。……ヨイショ、っと」
ヨイショ、って。オッサンくさいぞ。
――なんてツッコむヒマもなく、
「わ。なになになに……!?」
蒼太くんがいきなり私を横抱きにして抱えあげた。
わーやめてやめて。
実家に戻ってきてから太ったんだよー!
「昨日の再現。ほら、オレの部屋行くよ」
蒼太くんが私を見下ろしてニヤッと微笑む。
ニコ、ではなない。ニヤ、である。
もう彼の笑顔が胡散臭いものにしか思えなくなってきた。
「ぎゃ……っ!」
見覚えのあるベッドに下ろされて、そうか、ここは蒼太くんの部屋だったのか、と今さら理解する。
「兄さん、昨日も夜中に会社から呼び出されて……って、これは覚えてる?」
全然、覚えてない。
私はフルフルと首を左右に振る。
「そっか。まぁそれはいいや。で、オレと朱莉さんは兄さんがいなくなってからも二人でしばらく飲んでたんだけど。朱莉さんがオレの身体をまさぐり始めたから……」
「ウソ!?」
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