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どっちのアオ?
「……痛ったぁ」
頭が痛い。気持ち悪い。吐きそう。
重たい身体に鞭打って、どうにかベッドから起き上がろうとしたところで――
「痛っ……!」
ピキっと腰骨に走った痛み。
「もぅ、なんで、こんな……」
あちこちで悲鳴を上げるポンコツな自分の肉体が恨めしい。痛む腰を労るように摩りながら、ふと視線を落とすと――
「えっ! 何これ?」
目に入ったのは胸元に散らばる赤い痕。
「虫刺され……じゃないよね。これって、まさか……」
キスマーク。
「っていうか、ここ……どこ!?」
今さら気づいた。
周囲をぐるりと見回してみる。
ベッドは窓際に置かれていて、窓辺にはライトグレーのカーテンが掛かっている。カーテンをちらりとめくってみると、窓の外に白みかかった冬の青空が見えた。空が近い。その距離の近さに、二階建ての自分の家ではありえないことを確信する。
素肌を撫でるのはスベスベとした羽毛布団の感触。
気持ちいい……って、なぜ素っ裸なのか!?
腰の痛みといい、胸元のキスマークといい、このシチュエーションが意味することは……もちろんわかっているけれど、頭が理解するのを拒んでいる。問題なのは――
「朱莉~? まだいるのか?」
閉じたドアの向こうから名前を呼ばれてビクッと身体が震えた。
あの声……!!
「開けるぞ」
「え!? いや、その、えっと……あの…………ダメ!!」
「へ?」
ドアの向こうから間の抜けた声が聞こえた。
「いや、あの……ごめん! いまメイクが取れかけで顔ドロドロだから。ちょっと待ってて!」
とりあえず、ベッドに下に脱ぎっぱなしのまま放置されていた下着と衣服を身につける。その間も脳内でカナヅチでも振り回されているかのように頭がガンガンと痛んだ。
「バッグは……ない」
おそらくリビングに置いてあるのだろう。
ノロノロと着替えているあいだに昨夜の記憶がなんとなく戻ってきた。
たしか昨日は――
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