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深夜、青年が自宅マンションへ帰る。
「もう限界だ」
暗闇に呼びかける。返事は返ってこない。当たり前だ。ひとり暮らしなのである。
青年は真っ暗な部屋で座りこむ。立ち上がる体力も、電気をつける気力もない。このまま闇に溶けてしまいたい。そういう精神状態なのだ。
しばらく暗い部屋で膝を抱えて座る。ようやく部屋の明かりをつける気力が回復した。のそのそと立ち上がってスイッチを入れる。ライトの明かりがまぶしい。
窓の外を見る。向かいに同じようなマンションが建っている。それもそのはず。ここらへんは、コピーしたようなマンションが何棟も建ち並んでいる。宅地開発だかマンション開発だか知らないが、ここはそういう土地なのだ。集合住宅の集合地である。
ふたたび疲れが襲ってきた。しかたないので、床に寝ころんで食事を食べる。コンビニの袋を漁る。なかから食べ物を取り出し口に運ぶ。味はしない。わからない。
向かいのマンションを見上げる。青年の住んでいる中層階の部屋からは上層階の様子がよく見えた。真夜中になっても明かりがついているのはごく一部。だいたいの部屋は明かりが消えている。もう眠っているのだ。しあわせな人生だと思った。
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