森の賢者

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寮の裏山を下り、学校に着くと何やら騒がしい。 「救援か?」 キュンが言う。 「……違う。発砲している」 確かに校庭の方から、パンパンと音がする。 「いったい何なんだ? とにかく学校へ急ごう!」 島田がそう言って、皆で学校の方へ走って行く。 寮と学校の間の通路を渡ろうとして、校庭を見て皆足を止め驚愕する!? 大小のさっきの化物の群れと、警官隊が戦っていた。 その中には三上の姿もあった。 化物は小さい物は1m程、大きい物は2m位しかない。さっきの化物に比べれば小物だが、数が多い。数10匹、いや100近くは居る!? そして、小さいがその姿は先程の化物より、ずっと異形であった。 顔が崩れているモノ、体がねじ曲がっているモノ、下半身が異様に小さく引きずっているモノ、ブリッジをして蜘蛛のように長い手足で歩くモノ、単眼、複眼、肩の上に頭が2つ乗っているモノ、2体で体1つのモノさえいる。 さっきのはあくまで巨大な猿人の延長線上にいる化物であったが、もうその形式さえなしていない。完全な異形の化物の群だ。 「皆んな来ちゃダメっ!」 そう行って学校から飛び出して来たのは、拐われた筈の裕美であった。 「裕美っ!?」 彩がそう言って飛び出そうとしたが、裕美の背後に化物の迫り来る姿が見えた。 背丈は1mくらいだが、やはり異形で巨大な頭に口が縦に割れるようにあって、目は異様に小さい。遠くからでは見えない程だ。細い手足で必死に走ってくる。 「裕美危ないっ!?」 由美子がそう叫んで、裕美が後ろを振り返った時には 化物は既に裕美の肩に手を掛けようとしていた。 が パンッ! という発砲音の後、バシュッ!! という音を立てて、化物顔面のど真ん中に大きく風穴を開けた。 ドスン! と皆んなの横で尻餅を突く島田。 島田が持って来ていた金井のライフルを発射したのだ。 「ナイスショット! 俺より腕がいい」 忠野が島田を起こす。 「か、肩が外れたかも知れない……。」 「どれ」 そう言い、忠野は強引に島田の肩の外れてる方の腕を引っ張った。 ゴキッ! と鈍い音がする。 「ぎゃあっ! 何するんですか?」 「まだ痛いですか?」 「あ!? いえ」 「こう見えても柔道は3段です。練習で脱臼した自分の肩をはめたり、後輩の肩をはめてやった事もある。まあ、応急ですので後で医者へ。まあ行けたらですが……。」 そうこうしている内に、長も学校から走って出て来た。 そして捲し立てるように皆に言う。 「やられた! ワシらは、まんまとあのエテ公にハメられたのだ!!」 「どう言う事ですかっ!?」 島田は訊く。 「説明している暇などない! とにかく、お前らはまたあのドアの向こうに行き中から鍵を掛けろ!!」 長はそう言うと懐からあの鍵を出して投げた。それを賢がキャッチする。 「えっ!? どう言う事ですか!??」 島田はもう一度訊く。 「いいから——、」 と長が言い掛けた時に、学校から化物の群れがワサワサと出て来た。 それを、長は錫杖でなぎ倒す。 「君達は逃げろ! 俺も長に加勢する!!」 忠野は島田の落としたライフルを拾い言う。 忠野は直ぐに化物に向けて、ライフルを放つ。 サイズが縮んだ分1発良い所に当たれば、化物は倒れた。 だが弾は3発。忠野が2匹目を撃った時に弾が切れた。 化物が忠野に襲い掛かる。忠野は化物の牙をライフルで止めるが、長は他の化物供に囲まれて助けに行けない。 その時、学校の2階の窓が割れて、ベランダを飛び越して、山伏の一団が飛び降りて来た。そして錫杖で、忠野に襲い掛かっていた。 化物をぶん殴りなぎ倒した。 「あ、ありがとう……!?」 忠野は自分より若い山伏に礼を言う。 「いいえ。それより、彼らを!」 「ああ。皆んな行け! さっき言った通り俺は此処でこいつらを抑える!!」 とは言われたものの、忠野達を置いて逃げれずに皆居たが 「行こう!」 島田が言った。 「僕達が此処にいても、もう足手まといにしかならない!!」 大人としての決断だ。島田が言うしか無かった。 皆、島田に尻を叩かれるように、またあのドアを必死に走り目指した。 追ってくる化物供を一緒に来た山伏が蹴散らしてくれた。 それは、あの時に天狗山であった山伏だった。
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