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皆、疲れた体に鞭打ち、必死の思いでドアの前に辿り着く。
金井と羽織に包まれた中川の亡骸が2体、さっきのままであった。
「あの時はお世話になりました。そしてまた——」
賢は山伏に礼を言う。
「いや、これは我々の犯したミスだ。君達を助けるのは役目だ」
そう言って、山伏は改まり言った。
「此処からは、皆さんだけで行ってください。私は戻って長達に加勢します!」
「でも僕らだけで——。武器もない」
「大丈夫です。この中には、もうあの化物はいない。我々は失敗しました。パンドラの箱を開けたようです」
「どういう事ですかっ!?」
そう島田が訊いた時に、トンネルの入り口が騒がしくなって来た。
とうとう化物達が、すぐ側まで追って来たのだ。
「とにかく急いで! 此処は私が死守します。その内に、中に入って鍵を!!」
そう言うと、若い山伏はトンネルの入り口の方に向かい走って行った。
「ありがとうございますッ!!」
賢は山伏の背中に向かって叫んだ。
「よし行こう! 今は逃げるしかないよ! もう僕らは足手纏いにしかならない。あの人の気持ちを無駄にしちゃダメだ!!」
島田はそう答えて、ドアを開けて皆を入れた。
「よし閉めよう!!」
と島田はドアを押すが動かない。
「うーん! うーん! ダメだ! 全く動かない!!」
「鍵を挿せば自動で閉まるよ!」
彩が言った。
「ねえ!? 鍵って内側から掛けれるの!? 誰か1人犠牲になるんじゃないの!?」
紗江子が言った。
「ある! 鍵穴はある!! 長はあの化物は霊体になって鍵穴から出たって言ってた。なら、反対側にもある筈だ!!」
賢はそう言って、ドアの裏を懐中電灯で照らした。
そして
「あった!」
鍵穴はあった。
だが、そうこうしている内に、ギャッギャッという短く甲高いまさに猿のような不気味な声が迫って来ていた。1匹じゃない複数いる。
あの山伏はやられてしまったのか? それとも掻い潜って来たのか? それは分からないが、それを確認している余裕はない。
早くっ! 早く閉めて!!!
皆の声が揃う。
島田は鍵を鍵穴に刺した。
するとドアはバタンと自動でしまった。
鍵穴に鍵は挿したままにした。
鍵穴からまた霊体になって入って来るのを防げると思ったのだ。
ただ穴を物で塞ぐのではなく、術の掛かった鍵で塞ぐのだから大丈夫だろう。
そう島田は考えた。
長の先導のない暗黒のトンネルを再びあの地目指して進んだ。
なんとか出口まで辿り着けた。
一本道だが、迷って永遠に出れないかもしれないような不安があった。
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