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「あの、もう一度言って頂けませんか……?」
桐山家の双子の弟・宗介は、頭脳明晰・眉目秀麗。
見た目は美しいが、複雑な境遇のせいで性格はひん曲がってしまった。
そんな彼は現在混乱し、限り無く丁寧な言葉遣いで電話の応対をしていた。電話の相手は、家政婦派遣会社の真木だった。
『ですから、貴方の義理のお兄さんである宇都木宏鷹さんの契約無効について御説明したく、お電話したんですけど……』
宗介には双子兄・慶介以外に、血が繋がってない義兄が居る。だが、幼い頃に実父と義母が亡くなってからは別れたきりで、行方不明だった。
しかし電話の向こうの男は、今さっき慶介と買い物に出掛けた家政夫がその兄だと、言っているのだ。
『こちらとしてはとても残念ですが、家政婦が身内の家で仕事をするのは規約で認められていなくて……』
「家政婦を手配していたのは慶介の方なのですみませんが連絡はそちらにお願いします」
宗介はかなり動揺して、真木の言葉を息継ぎ無しの早口で流し、素早く受話器を置いた。
知らなかった事実を突然知らされ、心臓はバクバクと高鳴っていた。
「何で……?」
状況が飲み込めず、この言葉しか出なかった。
頭が回らず、しばらくそこを動けなかった時。ふと、家政夫と同じ施設に入っていたと言っていた居酒屋店主の顔が頭に浮かんだ。
この複雑な気持ちを誰かにぶつけたくて仕方なく。宗介は事情を知っていそうな店主の居る場所へと急いだ。
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