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「その……ここで二人が暮らしてたんだなって……。こういう事言って良いかはわからないけど……人があったかくて……良い場所ですね」
風でざわめく木々を見上げて、宗介は遠慮がちに言った。
職員や子供達と接してみて、宏鷹はここで大事に育てられていたと宗介は深く感じた。
子供達は人懐っこくて良い子ばかりで、子供に慣れていない双子でもすぐに馴染む事が出来た。
気に入ってもらえたのが嬉しかったのか、聖悠の声は弾んだ。
「だろ? 慶介も満更じゃなさそうだったし……連れてきて正解だったな」
隣に座った聖悠をちらりと見て、いろいろと言わなければと。宗介は地面を見つめて言葉を探した。
「ありがとうございました。俺と慶介が険悪だったから……気を使わせて」
「連れてきた理由はそれだけじゃねぇよ。知って欲しかったからさ。俺がどういう所に居たか」
「え……?」
宏鷹の事ではなく、聖悠が自身の事を語るのは珍しいと思った。宗介は黙って、聖悠の言葉に耳を傾けた。
「俺、本物の家族の記憶はそんなにねぇんだよ。俺を産んですぐに両親は亡くなって、爺ちゃん達もわりとすぐに亡くなったからほとんどがこの施設の記憶だ。友達ってのもあるけど……宏鷹やお前達にお節介焼くのも、多分羨ましいからだ。お前等も血は繋がってねぇけど……家族には変わりないし。家族ってのに、触れてたいんだろうな」
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