101人が本棚に入れています
本棚に追加
いつも明るい聖悠の言葉が、今は切なく宗介の胸に響いた。こんな想いを隠していた事に気付けなくて、苦しくなった。
聖悠は宗介の表情を見て、苦笑した。
「悪い。こんなしんみりした事、喋るつもりなかったんだけどな。お前には……知って欲しいと思ったんだよ」
「っ……」
この言葉が嬉しかった。聖悠の事を知りたいと、ずっと考えていたから。
宗介は、恐る恐る聖悠の手を自分から握った。いざ自分から触るとなると、すごく緊張した。手の震えが彼にも伝わって、おかしく思われないか心配になった。
「僕はっ……貴方の事を、もっと知りたいです。出来る事なら……僕が貴方の家族になりたいですっ」
自分の素直な気持ちを表に出すのが、こんなにも恥ずかしい事だとは知らなかった。
聖悠は静かで、握った手はぴくりとも動かない。
自分の想いが届かなかった。そう悟った宗介が顔を上げると、頬と額に温かな感触があった。
頬に聖悠の手が添えられ、額には彼の唇の感触があった。宗介は驚いて、持っていた紙コップを地面に落とした。
「悪い、思わず動いた……」
聖悠の手と唇は、名残惜しそうに離れていった。
「これが答えなんだけど……嫌だったか……?」
「い……いえ……」
触れた感触がじわじわと宗介の肌に染み入り、顔を熱くしていった。
最初のコメントを投稿しよう!