其ノ壱 私の結婚

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(結局は本能……なんだよね) 考えるよりも先に気持ちが大いに揺さぶられてしまった。 最終的には弥ノ助さんと結婚したい、添い遂げたいという気持ちが勝り今に至る。 結婚した今、私が弥ノ助さんのことを好きだという気持ちは変わらずあり続けているけれど、それでもまだ全てを受け入れられた訳ではないから時折考えてしまう。 (私たちは本当の意味で夫婦になれるのかな) 弥ノ助さんにはあって私にはないものがある。 それが私の望む真っ当な夫婦になる道を塞がなければいいなと思うばかりである。 「まだ何か考え込んでいるのかい」 「っ!」 考え事でボ─ッとしてしまった私の耳元でまた弥ノ助さんが囁いた。気が付けばいつの間にか忠司さんがいなくなっていた。 「昼休憩延長の許可を取ったよ」 「もう、弥ノ助さんったら。あまり忠司さんを困らせないでください」 「困らせてなんかいないよ。結局俺の希望した30分延長は却下されて間を取って15分で収まったんだからな」 「じゃあ私は今日、15分だけ残業します」 「なんだい、そりゃ」 「弥ノ助さんの尻拭いは妻である私がしなくっちゃ」 「君は若いくせに古臭い言葉を使うなぁ」 「古臭くありません」 そんな言い合いをしながらも延長された15分間、弥ノ助さんは頂いたお弁当を食べて、私はそんな弥ノ助さんを眺めながらお茶を淹れたりして過ごしたのだった。
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