其の弐 晩ご飯の献立

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私はにっこりしながら声がした方を振り返ると案の定其処には愛しい旦那様が立っていた。 「弥ノ助さん」 「迎えに来たよ。一緒に帰ろう」 そう言いながら差し出された掌を私は迷いなく取った。繋がれた掌からぽかぽかと温もりが伝わって来た。 弥ノ助さんは結婚してからこうやって仕事が終わった私をお店まで迎えに来てくれる。 一緒に帰れるこの時間は私にとっても幸せなひと時だ。 「弥ノ助さん、今日はお店に来ませんでしたね」 「あぁ……あんまり毎日行くと忠司に鬱陶しがられるからな」 「でも忠司さん、今日は来ないんかって言っていましたよ」 「本当かい? 全く、行ったら行ったで文句しか言わねぇっていうのに」 「それは弥ノ助さんが私の仕事を邪魔するからです」 「邪魔? してるかい?」 「まぁ……私は邪魔だとは思っていないんですけど」 「ははっ、嬉しいこと言ってくれるねぇ」 「……」 和装姿の弥ノ助さんは背も高くて背筋もしゃんと伸びているから見かけだけならただの粋なイケメンさん──なのだけれど…… (喋り方はやっぱりちょっとおじいちゃんっぽいんだよね)
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