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気まずい空気だと思ったけれど大和くんと喋らない安心感の方が勝って私は後ろからついて来る大和くんの靴音だけを無心で聞いていた。
「ねぇ」
「……」
「ねぇ」
「……」
「ねぇ、里咲ちゃん」
「!」
突然目の前に回り込んで来た大和くんに驚いた。不覚にも考え事をしていて大和くんからの問いかけに反応出来なかった。
(び、びっくりしたぁぁぁ!)
大きく目を見開いて大和くんを見ると「なんで無視すんの」と言われた。
「ごめんなさい。無視していた訳じゃなくて考え事していて反応が遅くなったというか」
「なに考えていたの」
「え」
「俺と一緒にいるのに何を考えていたのって聞いている」
「……」
(俺と一緒にいるのに?)
大和くんのその言い方に何か考えてはいけない深い意味が込められているような気がした。
「ねぇ、なに考えていたの」
「別に大和くんに言うほどのことじゃないよ」
いつものようにさらりと交わした──つもりだった。だけど
「あのさぁ、俺、里咲ちゃんのそういうところ、ちょっと癇に障る」
「──は?」
「なんでいつも俺の質問、はぐらかすの」
「……」
「今まで俺が訊いて来たことに対して里咲ちゃん、一度もちゃんとした答えをしてくれたことないよね」
「……」
「なんでそういう意地くそ悪いことすんの?」
「……」
(この子、何を言ってるの?)
何故突然こんなことを言われないといけないのかとじわじわと憤りを感じた。
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