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(? 大和くん、どうしたんだろう)
私が少し首を傾げているとやんわりと手を繋がれた感触がして驚いた。
「え…! や、弥ノ助さん?」
「そうか、分かったよ。悪かったな、里咲の買物に付き合わせて」
「や……別に俺が好きでやったことで──」
「好きで?」
「! な、なんでもない。じゃあ俺はこっちだから!」
突然大和くんは盛大に慌てながらその場からそそくさといなくなってしまった。
(えぇ、なんだったの?!)
私がどれだけ言っても離れてくれなかった大和くんがやけにあっさりと退散したことに呆然としていた。
「里咲ちゃん」
「! はい」
握られていた掌が一瞬ギュッと締まったような気がした。
「家に帰ろうか」
「え……あ、はい」
また『里咲ちゃん』呼びになってしまい少しがっかりしたけれど、そのまま手を繋がれているのは嬉しかった。
(というか)
家に向かって歩き出した私たちだったけれど疑問に思ったことがあったので私は弥ノ助さんに訊ねた。
「あの、弥ノ助さん。どうしてこんな処にいたんですか?」
「あぁ…。店に用事があって訪ねていた帰りにたまたま、な」
「偶然──ですか?」
「そうだよ」
「……」
(なんだ、迎えに来てくれたってわけじゃなかったのか)
もしかしたら──なんて思ったけれどそもそも帰る時間がいつになるか分からない状態でタイミングよく迎えに来てくれることはないだろうと思い直した。
(でも偶然弥ノ助さんがいてくれてよかった)
あのまま大和くんとふたりだけだったら私は大和くんに対してよくないことを言ってしまいそうだった。
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