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(言わずに済んでよかった)
遠い親戚でもある大和くんと気まずくなるのは本意ではない。だからある程度のところまでは我慢して来た。
(だけど……今日はちょっと危なかった)
「どうした」
「──え」
弥ノ助さんの声に我に返った。
「先刻から随分とため息が多いから」
「……あ」
気が付かないうちにため息を連発していたようだ。それを自分よりも先に弥ノ助さんに指摘されたことに少し戸惑った。
「大和に何か言われたのか」
「……」
「あの子は昔から里咲ちゃんに対して構うところがあったからな」
「……」
「俺の知らない里咲ちゃんを知っているだろうから其処に俺は入り込めないが」
「え」
弥ノ助さんから出た言葉がやけに胸に突き刺さった。
(なんでいきなりそんなことを──)
言うのだろうと思った。
確かに出逢った順番からいったら弥ノ助さんよりも大和くんの方が先だった。
しかし出逢ったといっても直接的な接触は弥ノ助さんとほぼ同じくらい。
弥ノ助さんも大和くんも私が【ときわや】でバイトを始めてから交流が出来たのだから。
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