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私の態度が弥ノ助さんを不安にしているのだとしたらそれは早々に払拭しなければいけない。
「弥ノ助さんしか知りませんよ」
「ん?」
「弥ノ助さんが何を心配しているのかは分かりませんが、大和くんは私のことを何も知りませんよ」
「……」
「私のことは弥ノ助さんしか知りません」
「……」
「そして私も──弥ノ助さんのことしか知りません」
「……」
「大丈夫ですよ、弥ノ助さん。私、弥ノ助さんが傍にいてくれたら何も怖くないです」
「……」
「だから……私を絶対に放さないでくださいね」
「……里咲ちゃん」
私の言葉でどれだけ弥ノ助さんに安心感を与えられたかは分からないけれど、今言える最大級の惚気を伝えたつもりだ。
(うん……家に帰ったらもっと弥ノ助さんに甘えてみよう)
言葉と態度──その二段構えで行こうとこっそりと心の中で決意した。
そんな私を見て弥ノ助さんにようやくいつもの暢気な雰囲気が戻って来た。
「そうかい。俺の取り越し苦労だったようだな」
「そうですよ。歳下のくせに生意気な大和くんに少し怒れただけです」
「……そうか」
繋がれた掌がまた少し強く握られた。
その温もりが私を何処へも行かせないような気がして……それを私は嬉しく思ったのだった。
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