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元々俺は運命とか宿命とか、ましてや生まれ変わりなんて二次元的なことを信じる性質ではなかった。
人間は死んだらそれで終わり。たった一度きりの人生なのだから余計に大切に悔いのないように生きなければいけないと、そういう考えをしていた。
だから信じたくなかった。
その信じない気持ちを俺は証明しなくてはいけないと思った。
あの人よりも先に──弥ノ助さんよりも早くに出逢った彼女を俺のものにする。
それが俺の持論を証明することでもあった。
しかし何の因果か高校生になった彼女はうちの店でバイトをすることになった。
目には見えない運命とか宿命とかが静かに彼女と弥ノ助さんを近づけようとしているのかと焦った俺は恥ずかしいという気持ちを抑え込みながら彼女と接触を始めた。
最初は他の女の子と接するように気易い雰囲気で絡んだ。
絡み初めて知ったのだが彼女も俺のことを小学生の時から知っていたと訊いた時は飛び上がるほどに嬉しかった。
──もっとも、彼女がどういった気持ちで俺のことを知っていたのかということは窺い知れないことだったが
そんな感じで弥ノ助さんより先に彼女の心に入り込むことに成功したものの、見えない赤い糸というやつは確実に彼女と弥ノ助さんを近づけて行った。
【ときわや】に出入りする弥ノ助さんと知り合った彼女は明らかに弥ノ助さんに惹かれて行っているのを間近で感じた。
俺と話している時と弥ノ助さんと話している時の声音、態度、雰囲気──その全てが違った。
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