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(子ども……出来るようなこと、してんのかな)
一瞬、つい数時間前に自分がしていた行為と妄想が重なって堪らなくなった。
(って何考えてんだ! 夫婦なんだから当たり前だろう!)
頭の中から不愉快な妄想を叩き出すために頭を強く振ってそしてよろめいた。
「何やってんの」
「っ、なんでもない!」
醜態を母に見られ呆れた声色でそういわれて恥ずかしくなった俺は「草餅三つ頂戴!」と吐き捨てていた。
「三つも食べるの?」
「今、無性に糖分摂取したいの」
「あ、そう。随分頭を使ったんだね」
「……」
母の軽口に言い返そうと思ったがこの不毛な会話が続くのは本意ではなかったために口を噤んだ。
母から買った草餅を手に店の奥にある和室の縁側に腰掛けた。この和室は普段は店員の休憩場として使われている六畳ほどの部屋だった。
その部屋に面した庭にはいくつか花壇があって其処には季節の花が植えられていていい目の保養になる。
「……」
備え付けられている急須でお茶を淹れ庭を眺めながら買ったばかりの草餅を頬張った。
ひとつ食べ終わったところで不意に視線に入ったのは庭の奥に鎮座している古い祠だった。
(いつ見ても不気味)
その祠は曰く付きのもので、いわばこの【ときわや】にまつわるお伽噺の発端となった者を祭っている祠だった。
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