王子はもう恋に溺れている

カイの安堵

ヒンニィのどこか穏やかな声を聞き、カイはほんの少し気が抜けたように小さくため息をつく。

「そんな…。悪いのは俺なんだから。」

カイがそう呟き、また眉間に皺を寄せるのに、ヒンニィは今度は大きく首を横に振った。

「ううん、本当にカイは悪くないの。…さっき、マアヤ様から話を聞いたんだけどね。…あの女の子、人間じゃないんだって。」

「…え？！どういう事？」

ヒンニィの口から思いもよらない言葉が出てきて、カイは目を丸くして驚きながらヒンニィの顔を覗き込むと、今度は首を縦に振り小さく頷いた。

「信じられないかもしれないけれど、そうなんだって。あの女の子は、お城にいるカワウソのミサキちゃんなんだって。」

「は？！あの女の子、ミサキなの？！」

ヒンニィの返答にカイは思わず素っ頓狂な声をあげてしまう。