第十章 五頁

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そうして納得しないと、耳鳴りがひどくて… いや実際、現実でも耳鳴りがすごい。 なぜなら僕とご主人様はへりこぷたーで 空を飛んでいた。へりこぷたーってあの、 へりこぷたーだ。ぷろぺらがついた空を飛ぶ 謎の乗り物のへりこぷたーだ。 バラバラバラバラバラ… 人は空を飛ぶ夢を見るそうだが正直な 感想はヘッドホンをしてても「うるさい」! それから、耳の奥がぼやけて吐き気がする。 ああ、地上があんな遠くに…屋敷が米粒 サイズに縮んでいる。列島全てが見渡せる ような気がする。 冷や汗と体の震えが止まらない。 へりこぷたーが揺れるから? ふふふ、今なら僕の育った家も見えるかな? 無理。足が宙に浮いてるようで重力のない 世界まで来てしまった。気持ち酸素も薄い。 地上が恋しい。でも怖くて下見られない。 目眩と腹痛と頭痛がいっぺんにやってきた。 ああもう、なんか、無理。 バラバラバラバラバラ… コクトー様が何か呼びかけてるけど全然、 何も聞こえない。飛んでいく…飛んでいく。 「……。」 「おーい!音句!音句!!…お前もしかして 高所恐怖症ってやつだったのか?おーい!」 「………。」 体ごと、意識まで空高くに飛んでいった。 そこからの空の景色を全く覚えていない。 僕にとっては非常に幸運なことだった。 そして帰りは絶対、地上から離れない。 固く、心に決めた。
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