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休み時間の教室で、私はひとり本を読んでいた。
「いやーそのあとさー」
「もー陽菜ってば、流石だよねー」
周囲から雑談が聞こえてくる。私はその中心にいる女の子の声に耳を傾けていた。
ふと本に影がかかる。顔を上げると友人が机の前に立っていた。
「深雪、なんの本読んでるの?」
「え? えーと……短編集だよ。休み時間に丁度いいかなと思って」
文字を追いつつ陽菜の様子をこっそり見ていたから、全然頭に入ってなかった。
朝河陽菜。私は彼女に片想いしている。一緒に保健委員をやっているうちに仲良くなったが、彼女はクラスではいつも沢山の人に囲まれている。彼女は明るくて、器用で、いろんなことによく気がつくから、クラスの皆から好かれていた。私はそんな彼女が大好きだ。だから、彼女の特別になれるなんて思ってもいなかった。
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